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前回、基板ひとつ(8x16灯)での点灯が確認できましたので、それを並べます。
このドライバICはI2Cバスで動作し、基板上で8種類のアドレスの設定ができるようになっています。そのため、基板を8枚並べたものを作ってみました。LEDの並びが正方形になるようにすると、32x32ドットの合計1024灯基板となります。

さらに、OCRを使ってガラス板に貼合したものを作製しました。
完成品が下の写真となります。


32x32 ミニLED評価基板


今回、貼り合わせたガラスは厚み5mmのガラスにしました。デモ機用に頑丈にしたかったためで、普段取り扱うガラスに比べるとずいぶん厚いガラスです。

これを点灯させた様子が下の写真となります。
電源を小さなマイコンボードから取っていますので、LEDの電流はそれほど大きくできません。点灯させるLEDの灯数に応じて、輝度調整を行っています。1枚目や2枚目は1個当たりの電流が大きいため明るく、全部点灯する3枚目は1個ずつの明るさは少し暗く点灯しています。
LEDチップの上に分厚いガラスが光学接着されているため、ガラス表面の反射で点灯しているLEDの周りもぼんやりと光るパネルとなりました。




各種点灯の様子


ガラス板との貼合には、OCRを用いました。
ミニLEDが100um程度の厚さがあるため、OCAではガラスと基板の間を十分充填できるかわからなかったからです。

貼合層の厚さは約300um。
OCRは硬化前は液体状のため、パネルの周囲に染み出します。硬化後に除去してクリーニングしました。


ダイレクトボンディング端部を裏側から


8枚の基板は並べてテープで固定してからガラスとの貼合を行いました。
何しろ初めてやってみる貼合だったため、貼合中に基板が移動してしまったり、並べた基板に隙間が空いてしまったりしてしまいました。隙間ができてしまった様子が下の写真。
わずか0.2mm程度ですが基板が白いレジストで隙間が空くととても目立ちます。次回があれば改善したいポイントです。


ミニLED基板のタイリング


ここからは毎度の宣伝となります。

今回作成したようなミニLEDの評価基板の試作対応いたします。
ミニLEDのマウンターが量産向けの速度ではないため、数十~数百チップを載せるような試作に適しています。(実績としては1~数千チップの試作経験があります)
基板作製も今回作成したような白レジスト基板や黒レジスト基板等、様々な基板を手配することもできますし、お客様が作製された基板に実装することもあります。

ご興味ございましたら、一度ご相談いただければと思います。弊社Webサイトのお問い合わせフォームよりお問い合わせください。


LED実装が終わったので後は光らせるだけです。

こちらが、秋月電子さんで販売されているHT16K33を使ったLEDドライバ基板。


HT16K33基板


簡単に入手できるのが良い点ですが、仕様書を見てもLED電流がどれくらい流れるのか、電流量を設定できるのかどうかがよくわかりません。ちゃんとしたLED評価には向かないICかと思います。
全体の明るさは16段階で変更できますが、LED一個ずつの明るさを変更することはできません。


ドライバIC基板を乗せた様子


LEDを実装する基板、ウラにこの基板が載るようになっています。
また、ICはI2Cで制御し、ジャンパー設定で8個までアドレス設定ができますので、最大8枚の基板を並べて動かすこともできます。

並べて動かすことを想定し、基板には電源とI2Cのラインを簡単に半田付けできるようにしてあります。
上の写真は2枚の基板を並べた状態。SCL, SDA, VDD, GNDと書かれたところが隣り合う基板同士接続できるようになっています。

まずは1枚を接続。
HT16K33基板を半田付けし、マイコンボードのI2Cとも半田接続します。


半田付けし、マイコンとも繋ぎました


点灯させるプログラムを作製し、書き込んで点灯の確認を行います。


mini LEDの点灯の様子


このICはホビー用にもたくさん使われているようで、動作させるためのヒントがたくさんあり簡単に動かすことができました。

写真では下から3行目が暗くなっていますが、時分割駆動とシャッタースピードの関係でこのように見えるだけで実際は全面が均一に発光しています。

いよいよこの基板をたくさん並べて、弊社のもう一つの技術「貼合」技術を使って完成を目指します。


さて、完成したLED実装基板にLEDを実装します。

弊社保有のminiLED実装機は、基板周辺などにアライメントマークが必要です。今回は、下の写真のように、基板四隅と長辺中央部に配置しました。アライメントマーク周辺とLED実装部はレジストを形成することができず、真っ白の基板というわけにはいきません。
このアライメントマークを使って、±25um(3σ)の位置精度でLEDを搭載します。そのため、アライメントマークの真円度が悪かったり傷がついていたりすると実装エラーが起きてしまうことがあります。
±25umというとかなりの位置精度なんですが、LEDチップ自体が100~200umだったり、接続PADが100umギャップもなかったりするため、チップによってはこれ以上精度が悪いと接続できない場合も出てきてしまいます。当然、基板のパターン精度も高いものが要求されます。デモ機では安価なFR-4基板でも対応できるよう、パターン設計を工夫しています。


ミニLED実装基板(アライメントマーク周辺)


LED搭載部の拡大です。
ベアチップのLEDがレジスト開口部に搭載されていることがわかるかと思います。

このLEDでサイズは0.2×0.38mm。肉眼では少し離れるとほどんど見えなくなります。LEDサイズに比べて基板の銅箔のギャップやスルーホールの大きさが目立ちますね。

LEDと基板の接続は特殊なはんだ材料を使っています。一般的なクリームはんだと同じように印刷してその上にチップを乗せます。半田印刷量が多いとチップを乗せたときに滑ってしまうため、塗布量のコントロールも重要です。


ミニLED実装部の拡大


5mmピッチで実装されたLEDを少し離れたところから写したのが下の写真です。
今回は基板メーカさんの標準仕様ということでレジストは1回塗布でした。写真をよく見ると、銅箔のない部分の白さと、銅箔の上の白色は違いがあって、銅箔の上は少しピンク色になっています。白さをより求める場合は、レジストを2回印刷するなど、対応が必要になりそうです。


5mmピッチで並んだミニLED


作った基板は128チップ/基板と搭載数としては少なく、お手軽です。
そのため、作製した基板を使って新しくミニLED実装機を扱うエンジニアの練習にも使ってもらうことができました。
基板裏面のアノード端子とカソード端子に電源を繋ぎ、点灯することを確認。マトリクス接続されているので、適当にプローブを当てることでどこかが光ります。

次はいよいよ全体の点灯です。


営業技術グループのRです。

miniLEDの主な用途はバックライトとディスプレイだと思われます。
バックライトはiPad Proで採用されたことで特に有名になりましたね。そんなバックライト用の光源をイメージしたデモ機が弊社にもあったのですが、長年(?)の活動により破損してしまいました。

そこで、新たなバックライト光源をイメージしたデモ機を作ることにしました。

主な目標は次の通りです。

  1. LEDはマトリクス配置されて、ある程度自由に点灯制御できること。
  2. あとからピッチ違いの基板を起こしたくなった時にも対応できること。
  3. 4辺ともLEDと基板端の距離をハーフピッチにしてタイリングできるようにすること。
  4. なるべく安価(重要!)で、壊れにくいこと。

色々調べていくと、LEDのコントロールには、8x16個の制御ができるHT16K33 というICを使えば良さそうということになりました。
気になる点はDimming機能で全体まとめての明るさコントロールはできますが、中間調表示ができないことと、流れる電流が少し多そう、という点でした。メリットは、簡単に取り扱えそうなことと、専用の基板が秋月電子さんでたくさん売られていることです。しかも一枚250円。
中間調表示ができないのはデモ機のため割り切り、電流については電流がある程度流せるものを選ぶことにしました。弊社取り扱い実績のある最小サイズ(0.1mm×0.2mm)が使えないのは残念です。

で、完成した基板がこちら。


8x16 miniLED基板


LEDは5mmピッチで、8行16列の128個が一枚の基板の上に乗せられるようになっています。
4辺のLEDまでの距離は2.5mmとしたので、この基板を並べるとタイリング表示ができるようになるはずです。制御プログラムは大変そうですけど。

基板は一般的なFR-4基板。デモ機としてある程度扱いやすいように、1.2mmという厚めの基板を使っています。

この基板の工夫した点としては、

  1. 秋月電子さんで売られているHT16K33基板をはんだ付けして使えるようにした。
  2. ミニLED実装時に基板裏に部品が載っていると受け台の作成が必要なので、LED実装後にLEDドライバを実装するようにした。この構造だと、ピッチ違いの基板でも対応ができる。
  3. タイリング時に隣の基板と電源・信号ラインを接続できるようにして、組み立てやすくした。
  4. 他のICでも制御できるように、16ピンのアノード×8ピンのカソードのLEDマトリクスとして配線を引き出せるようにした。

などがあります。

次回はこの基板にLEDを実装し、点灯させてみたいと思います。


営業技術グループのRです。今回は、作ってみたシリーズではなく、文章だけです。

5Gのサービスが始まり、徐々にサービスエリアが広がっているようです。
5Gといえば、高速・低遅延・多端末が特徴のようですが、高い周波数まで使われるのも大きな特徴ですね。
日本では現在のところ、Sub6(サブシックス)の3.6GHz~4.6GHzの範囲と、ミリ波の27GHz~29.5GHzが5Gに使われている電波の周波数帯のようです。
ちなみに4G(LTE)は700MHz~3.6GHzの各バンドが使われており、それより高い周波数を使うことになります。

5Gでは、使う周波数が高いため、アンテナのサイズも小さくなります。4GHzの1波長は7.5cm、ミリ波の30GHzでは1波長が1cmとなります。アンテナは1/10~1λくらいのサイズのものが多いですから、数ミリから数センチのアンテナを使うことになりそうです。

周波数が高い電波はより光に近い特性を持つようになり、建物などの障害物を回り込んで電波が届かなくなります。そのため、5Gではアンテナ技術が重要になると言われています。

一方で、題名にも書きました「メタマテリアル」。
「メタ」は「超越した」といった意味があり、自然界には存在しない特性を持つ材料・素材のことを差します。比誘電率や比透磁率は真空が1で、それ以上小さい物質は存在しないのですが、適切に材料設計をおこなうことで、特定の周波数の電波に対して、これらの値が1より小さく、マイナスになる場合もあるようなものが作り出せるそうです(浅学の私には付いていけない領域です)。
そうなるとどうなるかというと、電波を完全に反射したり、ロスなく回折させたりといったことが可能になるとのことで、このメタマテリアルによって5Gの電波を広い範囲に届けられないか、とぼんやり思っていますが、きっとそこら中で研究・開発されていることと思います。

メタマテリアルは狙った波長の長さから数分の1のサイズくらいの金属の構造を作る必要があります。棒だったりリングだったり、いろいろ研究されているようですね。
この「波長より小さいサイズ」、光だとナノメートルサイズの構造になってしまって大変そうですが、5Gの周波数くらいだと数mm~10数mmくらい。印刷などで十分作れる範囲ではないでしょうか。
印刷で平面上に並べたメタマテリアル構造、これを積層したりすると様々な特性が得られるようになるのではないでしょうか。

ここでようやく(本当にようやく)、弊社の出番です。
アンテナや反射板は、存在感がないほうが良いでしょうから、透明なフィルムやガラスにパターンを作りこむことがあるかと思います。
こういった部材を位置精度高く、多層で、様々な素材間で貼り合わせを行う、といったことは弊社の貼合加工の得意とする分野となります。高周波の損失を抑えるために、基材や貼合材料は特殊なものになることもあるかと思います。新規開発の材料評価に弊社の設備をご利用いただくこともできます。
変わった貼合、材料は(少なくとも営業的には)大歓迎ですので、ぜひお声がけいただければと思います。