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今回のお題は『真空』についてです。

 『真空』という言葉は日常生活でも頻繁に目にしますが、実は『真空』という状態・環境はさまざまな産業で幅広く活用されています。日本工業規格(JIS)では「真空とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態」と定義しています。

 私たちの真空のイメージは、酸素が減る、音が聞こえなくなる、電気を通さない、熱が冷めない、沸点が下がるというようなものがあります。もう少し整理すると、①大気圧との圧力差、②長い平均自由行程、③放電しやすさ、④高摩擦、⑤熱伝導のしにくさとなります。これらの特徴を利用する身近な応用技術を少しご紹介します。

 たとえば、毎日使う掃除機は真空の吸引効果を利用しています。歯の治療中に唾液を吸引する器械、布団圧縮、新幹線のトイレ等も身近な真空環境の利用です。また、酸化防止効果は食品の保存(真空パック)に使われています。インスタントコーヒーは、材料を真空状態のまま乾燥させることで材料の水分を飛ばしやすくする方法で作られます。弁当用の小さな醤油入れのなかに液体を引き込むのも、容器の内外圧力差を利用しますし、魔法瓶も真空の断熱効果を活用しています。

 このような身近な例だけではなく、真空は産業分野でも広く活用されています。真空蒸着は、物質を減圧状態において加熱し蒸発させ基板に被膜を作る現象を利用して薄膜を形成します。スパッタリングはプラズマ中のイオンを材料にぶつけると、その材料がはね飛ばされる減少を利用した薄膜形成の方法です。半導体の製造工程でも使われますが、CDの表面加工などもこの方法で行われます。

 当社でも真空をいろいろな製造工程で活用しています。以前、このメルマガでもご紹介しましたが、MEMSはごく小さく(Micro)機械的に動く(Mechanical)可動部を備えていますから、この微細が可動部を正常に作用させるためには、環境におけるさまざまな阻害要因から保護することが必要となります。この目的のために、MEMSを搭載する封止環境を真空にして、空気の粘性抵抗を減らし、真空封止内部からのアウトガスを防ぐための対策をとりますが、この真空封止を当社では幅広く承っております。真空封止に必要な先端設備も取り揃え、取り扱う作業者にはマイスタークラスのベテランを配置し、他社ではできないような高度なご依頼にも対応しておりますので、ぜひ、お気軽にご用命ください。

 以下、雑談です。この時期になりますと上諏訪駅周辺には何百羽ものカラスが集まってきます。特に、夕方は寝床を求めるカラスが上空を覆いつくす異様な光景が毎日繰り返されます。当社のある下諏訪駅周辺には一羽も来ないのですが、近隣住民の皆さんには大変迷惑なことと思います。実は、このカラスは渡り鳥の一種で、冬になるとシベリア方面からやってくるようです。地元でごみをあさって嫌がられるカラスとは異なる種類で、春になればいなくなります。とはいえ、あまり気持ちのよいものではないので、行政等も対策を練っていると思いますが、いまのところ春になるのを待つしかない状況です。

(T)